折り紙を折る。袖 (そで) を折る。フェンダーのツメを折る。転んで前歯を折る。釣竿を折る。
「折る」という「動作」をざっくり大まかに説明すると、「モノ」に「チカラ」を加えて、その「モノ」の形を変える行為です。 この日本語の「折る」について、しばし妄想にふけりました。
「折る」ときには、モノに力を加えます。その力の加え方を注視してみると、慎重にでも、そっとでも、えいっ !! でも、特に決まりはなく、どんなようにでもいいように思われます。
次に、モノに力を加えるときの、その程度を考えてみます。力の加え方と同様に、特に制減はないようです。
道具も使っても使わなくても、やはりたいして関係のないように思われます。
「折る」という行為について、力を加える「動作」だけを取り上げてみても、どうやら何の手応えもないようです。 "「モノ」に「チカラ」を加えて、その「モノ」の形を変える行為" という言い方は、少々荒っぽいというか、適当すぎると言うか、考えてみなくてもそんな日本語の動詞はわんさかあるわけです。
たとえば、潰す (つぶす)。こねる。ちぎる。伸ばす。ひねる。(答え : パン作り。ツイストパン)
その中で日本人はどうして「折る」を選ぶのか。どういったときに「折る」を使うのか。
折る。折る。折る。色んな「折る」を中空で再現しながら、妄想全開モードにギアチェンジです。
上のリストで上げたような「折る」を含んだ短文を読んでいると、日本人が「折る」を使うその決定的要因は、 その行為自体ではなく、おそらくその力を加える「対象」、いわゆる「目的語」ちゅーやつだ、という気がしてきます。
重要なのは「力を加える前のモノの形」と「力を加えた後のモノの形」なのでは ? と。
どんな「モノ」に力を加えるかです。
その「モノ」がどんなふうに変形したかということです。
折り紙がかかわってくるのは、1 番目の「力を加えた後のモノの形」が「変形する。力が加えられた部分が曲がる」場合の「折る」です。
Topたわめる、たわませるの自動詞は「たわむ」です。しなわせるは「しなう」。もうひとつ「しなる」というのもあります。「しなう」と意味は同じですが、他動詞は「しならせる」となります。こっちの方が舌をかみにくいかもしれません。
ちなみに漢字はいずれも同じ。
「たわめる / 撓める」「しなわせる / 撓わせる」「しならせる / 撓らせる」
脱線です。
ついでと言っちゃぁなんですが、 折り紙とは関係ない方の、「力を加えた後のモノの形が大きな二つに分かれる場合」を検証してみます。
「折る」という言葉が、モノにチカラを加えるという動作、行為には因らず、動作の対象物によって使われている。と調子良く書きました。
たとえば、プラスチック製の下敷きを考えてみます。服などの摩擦で静電気を帯びさせ、頭の上にかざすと髪の毛を逆立たせることができるという、あの「下敷き」です。この下敷きはたいてい薄っぺらく、長方形の形をしています。
下敷きは上記のように、力を加えるとたわみます。つまり、下敷きの端と端から手で押さえて中心に向けて力を加えると、やんわり曲がります。 これに、さらに、力を加え続けたとします。ある限界までくると、この下敷きはパキンと音を立てて、二つに分かれてしまうでしょう。
ここで、疑問が湧きます。この行為は何と言うんだろう。
もう少し、検証してみます。
板チョコは「折る ? 割る? 」、せんべいは「折る ? 割る? 」。 Mio さんの感覚で言うと「力を加える前のモノの形」が「2.平べったくて、まぁまぁ薄いもの。厚みのそんなにないもの」で「力を加えた後のモノの形が大きな二つに分かれる場合」では、「折る」と「割る」がせめぎあっているような気がします。
モノを曲げて「折る」時、曲げられた部分を境にして、そのモノの面積や長さ、容量などが大雑把に同じようになるように 1 度折ることを「ふたつに折る」と言うことができます。名詞にすると「ふたつ折り」です。
この調子でどんどん数えてみます。
2 度折ることは「みっつに折る」名詞は「三つ (みつ) 折り」、3 度折ることは「よっつに折る」名詞は「四つ (よつ) 折り」。4 度折ることは …
はて。と、斜め上に眼を向けてしまいました。
「いつつに折る」って、どうなんだろう。
動作としては不可能じゃないかも知れませんが、Mio さんの人生の中では、あんまり聞いたことがありません。名詞形の「五つ折り」も同じく。よく考えると、モノを均等に五等分するというのは、中々ムズカシイことかもしれません。もし、均等に分けるなら偶数の方がやりやすいはず ! という先入観が Mio さんにはあります。
なんと言っても「折り紙」は数学や幾何学の世界ですので、「foldingの可能性」としては 10 や 20 を折ることなど、お茶の子さいさいかもしれません。(いえ。Mio さんにはできませんが)
しかし、言葉としては「10」のあたりからずいぶんと怪しくなってきます。特に 名詞形の「11」以上を口にしようものなら「この人、もしかしたら江戸時代の人かもしれない 」などと妙な勘繰りを入れられることだってありえます。
では、何と言うか。
たぶん多くの人は、分かりやすく別の言葉を使っています。 たとえば、 十等分に折る とか 11回折る などと、言います。
折り紙などを折る場合の「折る」は、力の加え方や力加減、道具を使うか使わないかなどにはさっぱり関係がなく、力を加える前の形は「細くて、ある程度長さのあるようなもの」か「平べったくて、まぁまぁ薄いもの。厚みのそんなにないもの」で、そして、力を加えた後のモノの形は変形し、その力を加えた部分の角度が 179 度以下にカクっと曲がること。
「いくつに折る」と表現する場合は、だいたい「ここのつ」ぐらいまで。
report : 2011年 9月 30日
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