古代の人が薬玉を形容する言葉に、当時の薬玉に宿っていた「美」を感じる事ができます。
薬玉は美しいです。今も昔も、たぶんこれからも、ずっと。ずっと。
現代語訳 :
三條宮に居らつしゃる頃、五日の菖蒲の輿など持つて參つたり、藥玉をさし上げたり、若い女房達 (ひとたち) や
御匣殿などが、藥玉をこしらへて、姫宮若宮におつけ申し上げたりする。美事な藥玉を他からもさし上げたのに、青ざしといふものを人が持つて參つたのを、
(参考文献 : 清少納言『枕草子日訳新註』小林栄子 訳注. 言玄海書房, 1935.)
現代語訳 :
五月五日、三条中納言の所から、いつものとおり美しい薬玉 (くすだま) を献上して、「糸もきれいに整わなくて粗末なものでございます」と御口上 (こうじょう) があったけれど、
それどころか大変美しい。
「雲州往来」は、平安時代後期の学者、藤原明衡による書状集 (手紙の教科書のようなもの) です。
「往来」とは手紙のやり取りのことをいい、藤原明衡が出雲守であったことからこの名前があります。
読下し文 :
今朝 (コムテウ) 或 (ア) ル所 (トコロ)
自 (ヨ) リ 薬玉 (クスダマ) 一流 (イチリウ) ヲ
給 (タマ) ハル、作 (ツク) ルニ 百草 (ヒヤクサウ) 之
花 (ハナ) ヲ以 (モ) テシ、
貫 (ツラヌ) クニ 五色 (ゴシキ) 之絲 (イト) ヲ
以 (モ) テス、
又 (マタ) 草虫 (クサムシ) ノ形 (カタチ)
ヲ摸 (ホ) シテ、其 (ソ) ノ花房 (ハナフサ) ニ
栖 (ス) マシム、
芳艶 (ハウエム) 之美 (ヒ) 、
興 (キヨウ) 有 (ア) リ、
感 (カム) 有 (ア) リ、
古人 (コジン) ノ云 (イハ) ク、
此 (コ) ノ日 (ヒ) 續命 (ゾクミヤウ) ノ
縷 (イトスチ) ヲ懸 (カ) クレハ
則 (スナハチ) 人 (ヒト) ノ命 (イノチ) ヲ
益 (マ) スト云云 (ウンウン) 、
若 (モシ) 此 (コ) ノ物 (モノ)
之謂 (イヒ) 欤 (カ) 、
報 (ホウ) 賽 (サイ) セント欲 (オモ) フ
之處 (トコロ) ニ、
忽 (タチマチ) ニ 其 (ソ) ノ物 (モノ)
無 (ナ) シ、
唯 (タタ) 和語 (ワゴ) ヲ綴 (ツツ) テ、
聊 (イササ) カ答謝 (タフシャ) ス可 (ベ) シ、
纔 (ワズカ) ニ 篇什 (ヘンジフ) ヲ成 (ナ) スト
雖 (イヘド) モ、未 (イマタ) 猶 (ナホ)
首尾 (シユビ) ヲ弁 (ワキマ) ヘズ、
取捨 (シユシヤ) 之 訓説 (クンセツ) ヲ
承 (ウケタマハ) ランカ爲 (タメ) ニ
先 (マヅ) 以 (モ) テ 進覽 (シンラム) ス、
幸 (サイハヒ) ニ 一字 (イチジ) ヲ加 (クハ) ヘ
ハ千金 (センキム) ヲ屑 (モノノカスト) セ
不 (サ) ラン者 (モノ) 欤 (カ) 、
事 (コト) 是 (コレ) 嗚呼 (オコ) ナリ、
外聞 (ガイブン) ニ及 (オヨ) フコト莫 (ナ) カレ、
謹 (ツツシ) ミテ狀 (ジヤウ) ス
五月 (ゴグワツ) 五日 (ゴニチ)
權 (ゴン) ノ左中弁 (サチウベン)
兵部 (ヒヤウブ) 大輔 (タイフ) 殿 (ドノ)
レポート : 2012年 9月 14日
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